もしもドラクエの魔法が1つ使えるとすれば何選ぶ④

・ザオリク(死んだ仲間を必ず生き返らせる)
無論ザオラル(成功率50%)よりはザオリクの方が効率良い。だからと言って、オモチャを買ってくれた優しい爺っちゃんを生き返らせてはならない。八十歳(享年)で蘇るので、直ぐに再び亡くなる。
事故により、恋人が急死したり妻に先立たれた場合には非常に役立つが、果たして夫に先立たれた主婦は使用するだろうか? 充分な遺産が残ってさえいれば、使用しない可能性は極めて高 い。しかも、旦那が蘇生すれば、生命保険を返済する義務も生じる。ただし、使用しない主婦は、「なんでザオリクしないんでしょうね」と近所からモラルを問われたり、旦那方の親族からの評判が悪くなったりして、生き難い今後になるので注意が必要である。逆に、幼い兄弟や家のローンを残したままで逝ってしまった旦那は、まだまだ働いて貰わないと困るわということで、直ぐに生き返らせてもらえる。


・メガンテ(自らの命と引き換えに敵全体を即死か瀕死状態にする)
双方にとって良くないよ


・ドラゴラム(唱えた本人が竜と化し、暴れまくる)
全国の学校に点在してるはず。

「次の授業ドラゴラムだあ~。ウザッ」

「ドラゴラムがオマエのこと好きなんだってよお~!! ひゅーひゅー」

「バトン落とすなよぉドラゴラム」


・マホトーン(呪文を使えなくさせる)
唱えることを出来なくさせるのは、呪文だけであろうか?
泣く子を黙らせることが出来なければ、使う時は無し。


・トヘロス(自分より弱い敵が出現しなくなる)
これを唱えると、喧嘩を売れない相手が分かる。スカウターみたいだ。
宮本武蔵は、自分より強い者と戦わなかったから、無敗を誇ったと言われている。トヘロスを唱えることが出来た生き証人であろう。
トヘロスしたところで、女性は誰しも現れるであろう。アイツラ強敵だから。


・フバーハ(炎・吹雪によるダメージを軽減する)
高1の時の私は、年間40回以上も遅刻していた。罰として、春休みに特別登校して掃除をやらされた程の遅刻魔だった。いつも寝坊していたせいで家を出るのが遅かったので、5キロの道のりを10分程度で進まなければならなかった。チャリをすっ飛ばす日々だったが、今考えると、かなりの無謀運転だった。信号無視、踏み切り越え、永久立ち漕ぎ、後方確認なしで車道横断、ノーブレーキ ノンストップだった。よく事故を起こさなかったと思う。
冬は、快晴無風であろうと、時速40kmチャリで自ら空中を突っ切るので、体感風速は吹雪と変わらない。凍てつく外気が容赦なく顔を切り刻む。ハンドルを握る拳もカジカンジダ。
なもんで「フバーハ、フバーハ」言いながら、待ち受ける詰まらない教諭の接待の為に漕ぎ続ける他なかった。しかしフバーハを一番欲しかったのは高校までで、大人になったら車か電車利用ですし、老人になったらコタツに引き込もるつもりなので、今後はフバーハ要らずであられる。

そういえば高2の時に、クラスメートの友人が事故を起こした。車道の左端を自転車でゆっくり走っていたのだが、唐突にハンドルを右に切った結果モロに車道中央へ飛び出し、後方の車にはねられた。
災難である。
会社に行こうとしていた運転手は、非常に不幸である。百パー自転車側が悪い。
見舞いに行くと、片足を吊り上げられ、身体じゅう包帯だらけだわ、後頭部に血の塊をつけた友人が、瘤のような瞼を数ミリ持ち上げ「う゛う゛う゛」と唸るような表情をした。初日は全く喋らなかったが、数週間もすれば話せるようになり、「そういう目で看護婦を見てないわいっ!」と硬派を主張できるようになり、鈍痛の退いた表情をするようになった。
友人は、事故の時、”自分が右に曲がったことを全く覚えてない”と言った。意図的にハンドルを切った覚えは無いと。ただ、ウォークマンを大音量で聞いていたらしい。両耳を塞いでジャカジャカジャカジャカ音漏れさせていたせいで、外界と自身が乖離してしまったのではないだろうか。因みに、聴いていた曲は、長渕剛の”ひまわり”。

北へ 南へ 東へ 西へ

なんか、友人が現在も元気なので、ちょっと笑える失敗談だが、もし事故死していれば、ゾッとする話に180度転換しそうな出来事である。
曲が”とんぼ”だったら、ひたすら真っ直ぐ進めていたかもしれない。

薄っぺらのボストンバッグ 北へ北へ向かった




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