店員さん、いらっしゃーい①

”夢あかり”というらー麺屋さんが、テレ東の最強ラーメンで紹介されたので、翌日に行ってみた。
二人の店員さんが居た。仲の良い中年夫婦っぽく見えた。
テレビの通り、品はキチントしていた。にもかかわらず、店員さんには謙虚さが滲み出ていて、天狗の微塵もみられなかった。
(ワタクシめなんかが美味しい麺だなんてとてもとても作れませんわ)
と、心の中で呟きながら黙々と勤労している感じに見えた。
「ウメえラーメンとわなあ」
と説教し出す麺職人っぽさが全く無い。

時々、いかにも切った張ったの世界でやってますという気合いを前面に押し出したあるじが営み、
”残したら罰金頂きます”
という規則ありきの店を見掛けるが、これは頂けない。
味に大自信があるのは分かる。好き嫌いせずに残さず食えという美徳を振りかざすのも分かる。しかし、目の前に出てくるまで量は分からんからね。
店内には、罰金を伝える張り紙が嫌でも目立つ箇所や箇所にベタベタベタベタ。あるじ直筆のその文面は、目に入れたら痛い。
絶えず付き纏う、食べ切らなければならないという義務感のプレッシャーに苛まれながらの晩餐。素材を味わうことは愚か塩化ナトリウムが喉を通った心地すらしない。食道を、炭水化物が、ナメクジのように、じっとり、這って、行く。

例え出されたモノが思いの他に多量であったとて、満腹になっても食せというのは、栄養過多の強制である。
また、食べ切れない人々の多くは、幼少期に”給食”を残してしまい、教師から白い目で刺され、その教師がひいきするワンパク小僧からドヤ顔されたりして、罪悪感を植え付けられている。
左様な良心の呵責を巧みに呼び起こさせ、償いとして金銭の支払いを完食不能な小食者に命ズル行為は詐欺罪にあたり違法であるといえる。


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