「初めての異常気象ね。アナタと出会ってから、初めての経験ばかりで、シ・ゲ・キ・て・き」
と、後に”爆弾低気圧”と名付けられることとなる悪天候にもかかわらず、カノジョはうっとりしていた。
途中、でっかい看板があるラーメン屋に寄った。
丁度雨が止んだが、私はツッカケだったので、大雨でできた水溜りをよけながら、駐車場から店内へ移動するのも一苦労だった。
食べ終わった後、外に出たら、また土砂降り。
私はカノジョを店のドアの前に立たせて、言った。
「ここで待ってて。車をギリギリまで横付けするから」
「そんな悪いよ」
「いや、濡れるのはオレ一人で充分」
そう言うと、私はキャサリン・ゼタ=ジョーンズを置いて去る。
ゼタのヤツ、今、俺の後ろ姿に惚れ直しているんだろうな。
カノジョの自宅である市営団地に到着すると、向こうから熱烈に舌を絡めてきた。
「初めてよ。グレートブリテン及びアイルランド連合王国人とのkissは。ステキ」
と、笑みを浮かべるカノジョ。
「ス・テ・キのテを抜いて言ってごらん」
「ウフフ私から言わせるのね。イジワル」
本当は、この女に濡れたままで車に乗られると困る。
納車時に被せてあった座席のビニールカバーを剥がした矢先に、こんな日だから後悔していた。
新車だし、できるだけ座席を濡らしたくなかった。被害最小限で済ましたいから、濡れるのは自分一人までなんダヨーーーだ。