逃亡②

【※逃亡①からお読みください】


詳細は機密上明かせないが、某有名ロックバンドが20万人ライブという前人未到のコンサートを実現した際の出来事を伝える。

世界最大級のイベントに、前日から徹夜して行列をなしているファンが多く居た。私もその一人だった。私は興奮していた。
ふと、側に、虚ろな目をした男が居た。いかにも不健康そうに痩せていて、肌が青白い。
「楽しみですねえ」
と、私が声を掛けると、
「まあ」
と、その男が答えた。
余り話し掛けて欲しい雰囲気では無かったので、会話を辞めると、 「キミの名前は?」
と、男が聞いてきた。私が返答すると、
「僕はレキシ」
と男が名乗る。
「レキシ?! 変わった名前だなあ。漢字はどう書くの?」
と、聞いたら、再び男は無言になった。

ライブ中も、その男は終始無言で焦点が定まっておらず、身体の動きが一切ない。楽しんでいないのは明らかである。
しかし、その男以外は熱狂しており、盛大さが計り知れなかった。
さあ、もう最終曲だ。
アンコールも全て終わり、全体が静まった。余韻で空気が揺れているせいか、完全な静寂ではない。

その時、レキシが動いた。

彼が舞台へ向かって駆け出した。
しかし、レキシは数人のSP達によって、なんなく取り押さえられた。地べたでうつ伏せに這わされ、苦痛の表情で歯を食いしばっている。
すると、周囲の観客達が、レキシを取り押さえているSPへ襲い掛かった。
また、複数のSPが出てきた。私は一人のSPの首の骨を折り、拳銃を奪った。次々とSPや警官を打ち殺し、拳銃を奪って、周囲の観客へ手渡した。
総スタッフ数は7500人らしいが、20万という数には勝てまい。
圧勝で終わったが、後に、主犯や何人かは逮捕された。犠牲者も何人か出た。
しかし、20万人の殆どが、まだ捕まっていない。私も現在逃亡中である。





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