逃亡③

【※"逃亡①"からお読みください】


詳細は機密上明かせないが、某有名ロックバンドが20万人ライブという前人未到のコンサート(演奏会)を実現した際の出来事(ショッキング)を伝える。

実は当日、
『直ちにライブを中止しなければバンド集団を殺す』
なる殺害予告メールが届いた。
どうせ悪戯だろと興行主(実行委員)の誰もが思ったが、万が一(億が一)の事があれば惨状を免れ得ない。とはいえ、今更中止すれば、甚大な損失(金儲け出来ない)を被るのは目に見えている(見え見えだ)し、何よりも前日から徹夜(一昨日来やがって)して行列をなしているファン(マニア)の皆様に対して申し訳ない(メンゴ)。
そこで、厳戒体制の元で当ライブを実行する(お運び)となった。
警備員が3,000人と警察官(サツ)が320人動員していたが、本部はSP(セキュリティポリス)を五百人投入した。その頃SP(セキュリティポリスマン)だった私も、休日のさなかに緊急命令を受け、駆り出された。
入場の際には、全員の持ち物検査を(空港の持ち物検査の時に服の上から調べる棒状のやつで)ポケット(ズボン下)の中身に至るまで徹底し、ライブ中は全てのSP(セキュリティポリスメン)ほかスタッフ(さん)達も細心の注意(ナーヴァスセンシティブ)を払いながら、観客(愛好家)を後列に渡るまで監視した。上空はヘリも舞っている。
ふと、最前列に、虚ろな目をした男が居た。終始無言で焦点が定まっておらず、身体の動きが一切ない。いかにも不健康そうに痩せていて、肌が青白い。楽しんでいないのは明らかである。
しかし、その男が豹変してステージ(セット)へ飛び乗ろうが、即座に四方八方から百人のSP(セキュリティポリスメン&ウーメン)が出現して取り押さえる準備は万端である。その後ろには、四百人の猛者(タフガイ)が待機し目を光らせている。消防士も80人居る。
持ち物検査で確認済みだが、キサマは銃も爆弾も持っていない。失敗(ペケ)だな。
さあ、もう最終曲だ。
アンコール(一度歌った曲の催促というお約束)も全て終わり、全体が静まった。余韻で空気が揺れているせいか、完全な静寂ではない。(閑さや岩にしみ入る蝉の声)
その時、最前列の男が動いた。
その男の近くで待機していたSP(セキュリティポリ公)達が、男へ向かって駆け出した。
その男は、十人のSP(スーパーポリ公)によって難なく取り押さえられた。終わった(フィナーレ)か。

男の周囲に居た観客達(オーディエンス)が、一斉に、取り押さえているSP(セクシイポリス)達へ飛び掛かった。
待機していたSP(セックスパートナー)が、すかさず暴挙している観客達へ飛び掛かる。
その周囲の観客、その周囲の周囲の観客、いや、20万人(19万9889人)全ての観客が、一斉にステージ(壇上)に向かって飛び掛かってきた。

分が悪過ぎる。私は一目散に逃げた。
命は助かったが、もう、古巣(愛の巣)には戻れない。射撃訓練(射精訓練)においては常に上位(正常位)で、SP(サウスポー)の腕前(テク)は重宝されていたのに、SP(セックスプロフェッショナル)の任務を投げ出した者が面(ムスコ)を出せる場所はない。
現在も私は誰の目にも付かない所で、ひっそりと逃亡生活をしている。