もしも放浪の旅中にスマホが故障したら、こうなる。

初めて沖縄を放浪した時の話。
那覇空港から様々なゲストハウスを転々としながら北上して行った。正直、那覇市の海はそこまで綺麗ではなく、北に行くほど水の色は透き通り、離れた所から見ると、見事なマリンブルーと化して行く。
放浪から32日目、今帰仁(なきじん)という北部の浅瀬沿いを缶チューハイ片手に散歩していたら、岩場で滑って海へドボン! 後頭部ガツン!!
とっさに手をついて受け身をとってなかったら、頭蓋骨陥没していたかもしれない。左手首の皮がめくれていた。実はこの時左ももの裏側も強打していたのだが、それには気付かなかった。後日、ドス黒い紫の打ち身になっていることを他者から言われて初めて自分で気付きゾッとすることとなる。

そんなことはどーでも良くて、スマホ水没故障!!!

というか、転倒した直後に立ち上がって先ずした事は、海に投げ出された缶チューハイをジャパジャパ取りに行ったこと。通常は先ずポッケ内のスマホを取り出して陸に上げるべきで、行動の優先順位をミスしてしまったわけであり…恐るべし酒の魔力。

明後日から友人と合流して3日間共に旅する約束をしていた。会う時間と場所は決めてない。どうやって連絡取れるん?
スマホを再購入したとしても、全てのアプリのパスワードは1つのパスワード管理アプリの中にあり、そのアプリは故障したスマホか家のPCの中。
今後の宿の予約は? 飛行機は?  LINEの引継ぎは一生不可能かも。
パニくって泣きそうになった。いや、泣いたよ。

しょっぱくなった残りのチューハイを飲んで、無理やり落ち着かせながら、宿に戻った。

ライフラインを失った今、分かっている情報は、実家の電話番号(いえでん)だけ。
とりあえずストロングゼロを飲んだら、すぐに名案が浮かんだ。
実家に電話をして、親に昔の自分のガラケーの電話帳を検索してもらい、友人のメアドを教えてもらうのだ。
そのためには、宿のオーナーさんに電話を貸してもらわなければならないのだが、親への説明内容が、先ず携帯と充電器がある場所はどこどこのタンスの引き出しの何番目の何色の箱の中であり、次にケータイは黒ではなくグレーだけどパカパカの方を出して、充電器はとにかく端子に差し込める奴を探し出し、おっとオレンジ色の箱は決して開けるなよ、鼻血ブーする類いの本が入ってるから、よっしゃ電源を長押ししたらコードを入力してくださいと表示されるから番号言うからロック解除して電話帳という文字を押して……

ガラケーの使い方は最早忘れている機械オンチの高齢女性である。まして他人が使っていたFOMAだ。
これらを説明してメアドを手に入れるには、莫大な電話代がかかる。

オホホ

幸運にも母はLINEをしていた。そして母の携帯番号でID検索すると、見付けることが出来る。
そこで、オーナーさんに「すいません、後で焼酎ごちそうするので、2分ほど電話をかけさせて頂けないでしょうか?」と懇願してスマホをお借りして母の携帯番号をゲット。そこからオーナーさんと親をLINE交換して、LINE通話をした。はいむりょー。
1時間以上かけて遂に友人のメアドを手に入れた。そこからは簡単。宿の共有スペースにあるPCで自分のOutlook.comアカウントを新規作成。そこのフリーメールを使用して友人とメールでやり取りをして無事に会うことができた。彼はレンタカーを3日間借りていたので、足がない自分にとっては必要不可欠な存在なのである。
その後は、彼のスマホで激安予約サイトagodaアプリから代理予約してもらったり、行く先々でPCが無いゲストハウスでは、仲良くなった方々からSafariやGoogleChromeのブラウザを借りて、宿や飛行機の予約をさせてもらった。
かくして、後頭部を打ってから23日後に悦楽放浪を終えて無事帰宅できたのである。

スマホを貸してくれた方々には土下座して感謝します。