まがいもの

まがいものばかりを掴まされた人生でした。

小3の時に図画の授業がありました。魔法の世界を想像して1枚の画用紙に描くという課題です。最初に黒の油性ペンで下書きをして、後に絵の具で塗ります。僕は鼻の尖った魔女が帚に跨がり、夜空を飛ぶ様子を描きました。星を黄色い絵具で塗りました。原色で塗ったのに、黄土色よりもっと暗い色になりました。次に、白にほんの少しの朱色を混ぜて王道の肌色を作り、魔女の顔を塗りました。しかしまだらに黒っぽい色が出てきて、墨を塗られた顔のようになりました。どこをどんな色の絵具で塗っても、黒が滲み出てきて暗い色になるのです。周りのみんなの絵は、黒が混ざることなく、綺麗な色をしていました。
先生から渡された下書き用のペンが、僕だけ水性でした。

小6の時のスキー合宿では、斜面に立ってもスキーが全く滑りませんでした。両手で握りしめたストックをめいいっぱい押してもビクともせず、なんと歩いて斜面を下れるのです。「いいな~転ばんで」とクラスメイト。嫌味ですか。全くおもしろくなかったです。
僕に学校から用意されたスキー板は、裏に凍った雪がビッシリ貼り付いていました。それが、見事な滑り止めを果たしていたようです。

中1の時、三階にある売店に行き、水泳用のサポーターを購入しました。売店のオバちゃんは、いつも下を向いていて、生徒と目を合わせようとしない人でした。開いた小窓からお金を受け取り、商品とお釣りを出すのを手でさばくだけで、口を一切開かず、まるでパチンコの換金所のようです。水泳の時に更衣室でサポーターの袋を開けると、女性用でした。その日は変態扱いです。売店へ返品しに行くと、「あらあら声が高かったから女の子かと思ったわ」と冷めた視線を僕に向けたババアが謝罪すること無く言いました。当時の僕はまだ声変わりしてなかったのですが、男らしくて強い不良がモテる学校だったので、女子と間違えられたことはショッキングでした。

大学2年生の時に、初めて行った海外旅行は香港でした。市場で九千円強のジッポを見かけました。なんか洒落たクラシックカーがデザインされていたので、少々値が張ってたけど、思い切って購入しました。カチン、シュポッと、蓋の開閉音と着火音も心地好かったです。お気に入りのマルメンライトをうねる灯火に近付けると、ジッポの芯がホワイトからブラックへ変わり、チリチリと焦げ音を発して、その芯はみるみる縮んでいき、やがて無くなり、微火も消え去り、白煙がすん。

問い
”まがいもの”という語句を正しく表現している物品を答えよ。